ソフトウェアエンジニアとお笑い芸人

最近はプログラミングスクールのCM動画をよく見かけます。業界の外の知り合いから話を聞かれることもたまにあります。でもわたしには、全然その界隈の知識もないし、調べようという気にもならないんですよね。すでに自分が長いこといる業界に新しい風が吹いている、と解釈すると、なんとなく、もうすこし興味を持った方がいいのかな、とも思うんですが、どうにも直感的には距離が遠く感じるわけです。誰かがTwitterでつぶやいていたような気もしますが、我々のようなひとたちは、教育機関で体系的に教えてもらえる機会は少なくて、現場で独学でやってきて生き残ってきた人たちなわけです。実際の現場でしかわからないことや、プログラミングやシステム開発を、お仕事としてやる場合に特有の事情や、業務知識なんかは余計にその傾向が強いです。

ただ、できる限り客観的に状況をみてみると、ついにこの業界がコモディティ化しようとしていることかもしれない、とも思える気もします(いや、心の底では信じていないし信じたくないんですが、わたしが信じているかどうかと実際の傾向は別の話なので)。プログラミングスクールみたいなものが整備されるのであれば、それは業界全体の技術力向上に寄与する可能性も、まあ、なくは、ないような、気がしないでも、ないですよね(弱気)。ただ、プログラミングって単純作業ではないので、そんな風に事業を行っているプログラミングスクールは本当にビジネスとしては旨味が少ないようにも感じますが、ビジネスの素人からはこれ以上言うことはありません。

いつも思い浮かべてしまうのが、お笑い業界なんですよね。業界全体ではないにせよ、業界最大手の吉本興業NSCというスクールを作ってもう長い歴史があり、そこから芸能界で活躍するお笑い芸人がとくもかくにもたくさん排出されているわけです。これは全くの想像ですが、NSCができた当初はもともといた芸人さんたちには抵抗があったんじゃないかな、と思うわけです。「芸事は師匠の背中を見て学ぶもんだ」みたいな感じですかね。プログラミングスクールの存在にまったく親近感を覚えないどころか一種の抵抗感があるのは、これに似ているのかもしれない、と思うわけです。

お笑い芸人の絶対数や業界慣習の違いはあるのであまりにも雑な比べ方だという自覚はありますが、抽象化するなら、方法論の俗人化排除がキーワードですかね。その志には共感するし、プログラミングスクール事業を行う各社にはぜひIT技術者の実践力底上げを図って欲しいとは思うものの、まだ本当に未知数ですね。何年か後にはブームも去って、その時点での状況がむしろ健全な状態なんだろうな、という予測は持っています。

あと、よく見かけるのは、技術好きじゃないやつに業界に入ってきてほしくない的なご意見でしょうか。この点ではあまり共感できないんですよ。私自身はめちゃくちゃ技術好きなやつですが、別に意識が高いわけでも志が立派なわけでもなく、単に好きなだけなんですよね。すでにこの業界には技術好き以外の人間はわんさか存在しているわけで、上記の発言を見ると、そういった方々と仕事をせずに済んでいるということならば羨ましい限りです。そうでないなら、今回のタイミングでの発言はマトを外していると言うか、単なる愚痴にしかならないと思います。

個人的には職業訓練コスパ面でもお勧めすることが多いんですが、まあ、時間と共にプログラミングスクールの功績や課題が炙り出されてくるでしょう。